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御手抜弁当之猫屋

じーちゃん

じーちゃんは今年70。
今だに現役で、トラック転がして鋼材かついだりしてるが
最近、怪我が多い。
あたしも車で15分くらいの所にいるのだけど、
妹が同じ町内にいるので あっちのほうが様子はよく判ってる。
「オジィから電話きた?」
「いいや、又、なんかあったん?」
「腕ひねったらしくて、腫れてるねん。
 医者いくように云うてや。あたしが云うてもあかん」
普段、妹に世話かけてる癖に、あたしの云うことしか聞かんのだ。
あたしの方が、オカアチャンに似てるせいらしい。

オカアチャンとは、見ていて恥ずかしいほど仲良し夫婦だった。
まさに、チャーミーグリーン状態。
それが、セーテンのヘキレキで オカアチャンの癌が発覚、
医者の診断通り半年後に逝くまでは、恥ずかしいを超越して壮絶だった。
本人に告知しようというあたしら子供の意見を頑として聞かなかった。
オペで開腹したものの手がつけられない状態で、
なんの処置もなく縫合、その後一時帰宅が許された。
じーちゃんはその時、家を大改造した。
トイレの段差をなくし、ウェシュレットをつけ、
シャワーを設置して、クーラーを入れ替え・・
何日 居れるかわからん最後の帰宅に 大枚をはたいた。

家にはヒト月もいられなかった。
再入院で、本人もうすうす感づいていたのだろう。
時々「あたしが死んだら」とか「○○はドコソコに仕舞ってあるから」みたいなことを云っていた。
それでも「絶対、治るから」といい続けて
じーちゃんは、毎日、絶対欠かさず病院に通い続けた。
最後の最後まで通い続けて、夜明けの臨終を一人で見届けた。

一人になって、6年。
加速度的にワガママジジィになってゆく。
今だに、仏壇としゃべってる。

ああいう夫婦になりたかったな。



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